詩人の大岡信さんが、4月5日に他界されました。ご自身の作品はもちろん、朝日新聞に長く連載されたコラム『折々のうた』がよく知られています。
合唱曲にも、大岡さんの詩による作品があります。「混声合唱組曲 方舟(はこぶね)」(作曲:木下牧子)がそうです。「方舟」は4曲からなる組曲で、私が好きな合唱作品のひとつでもあります。特に『夏のおもひに』は、夏の夕べの海辺の光景の中、若者が伝えきれなかった恋心を思い、忘れられない人の面影を心に描く様子が美しい日本語で綴られ、清々しく、かつ切なさが胸に広がります。これは大岡さんが16歳のときに書いた詩だと知ったときは、その語彙力と感性に驚き、より深く感動しました。
『夏のおもひに』だけでなく他の3曲もそれぞれに魅力的な言葉にあふれた作品ですが、どの曲も少々難しいのでなかなか歌うチャンスには巡り会えません。いつか歌ってみたい、私の憧れの合唱曲です。(指揮者N)
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