最近はなかなか小説を読む時間がなかったのですが、久しぶりに愛読書のひとつ、『天切り松 闇がたり』を手に取ってみました。
作者は『鉄道員(ぽっぽや)』で有名な浅田次郎氏。伝説の大泥棒「天切り松」こと松蔵が、盗賊独特の「闇がたり」という声で、大正から昭和までを振り返りながら、留置場の中の人々や警察署員を相手に語り聞かせる、という物語です。回想して語られる粋な盗賊一家の物語は、モガ、モボ、ハイカラといった言葉がよく似合う、大正ロマンに溢れたお話です。
それにしても、興味が湧くのは「闇がたり」という声の出し方。物語の中では、盗賊が夜の闇に紛れて仲間と話す、六尺四方にしか届かない低い声だと説明されています。日頃から声を気にかけている身としては、いったいどんな発声なのかと気になるところです。私たちは、いかにして伸びやかに声を出すかということを追求して歌っている訳ですから、「闇がたり」は真逆の発声。どんな声色の語り口なのか、想像は膨らみます。ただし、習得して活用する予定はございませんので、どうぞご心配なく!(指揮者N)
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